2026-04

その他 altro

はじめに

 個人サイトを作ってみました。といっても、これまであまりそういうものの熱心な読者ではなかったので、タイトルから書き出しから、手探りのスタートです。Halitusというタイトルは、ラテン語で「息」や「蒸気」といった意味ですが、音、声、詩、生命、面影——そういう雲をつかむような対象について、なにかアーカイブを残せたら、という気持ちを込めています。  ちょうどここ一年ほど、「月刊シナリオ」という雑誌で「息の根」という短文連載をいただけたことがきっかけで、バラバラだと思っていた自分の興味に、どんな脈が通っているのかを実感する機会が増えてきました。それを地道に文脈に移していくと、もしかしたら20年後くらいに自分が(あるいは誰かが)助かるかもしれないな、というのがサイトを作った最初の動機です。  もうひとつの理由は、自分がここ数年、イタリア文学、とくに詩を中心に研究するなかで、派生して映画や音楽、普段の生活でもなんだか感動のレベルが上がってしまったため、適当に吐きださないと身がもたないからです。あわよくば、そうやって吐きだした息がだんだん形をとり、誰かにとっての公園みたいな場所に育...
2026.04.24
詩 poesia

休日の電車

あの電車に乗ったらぼくはもうぐっすり眠るだろういっぱい本を詰めた鞄を足もとに置いて 腕をひろげてこときれたように気持ちがいいんだ抜け目ない子供が財布をすってもぼくはいっこう気づかず眠るあたりのみんなも眠りはじめるおじさんのよだれが座席に落ちジャージを履いた女子高生も子守りに疲れたおばさんもぽっかり口を空けたまま——一羽のルリカケスがまっすぐに車内を飛んできたそれには気づかずにいつしかみんな起きるのを待っている神様はびんぼうゆすりを繰り返しそのゆすりがまた眠気をさそうのだどうしてこんなにやわらかいのだろう車窓を素早くよぎる動かぬはらわたはいっそうやわらかい、ということを忘れるほどただ家に帰るだけなのに海水浴をめざすような気分だ、なんて——ああ これは家への道ではない  この乗客はみな 家を失った人々——気づいたとき僕はもう列車に乗っておりそれからずいぶん長いこと揺られていたこともかさねて思い出していた最初に起きたおばさんがいそいそ荷物をまとめはじめる転がり落ちたミカンをすかさずひろい僕は——あのう、降りるんですかと聞くおばさんは寝ている子どもを一瞥し——この子を届けにいくんですよと言...
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