最近よく聞いている、春の夜にとてもよく合うアルバムです。パット・メセニーの最初期の録音としても知られていますが、取り上げられることはそれほど多くないんじゃないでしょうか。個人的には、ECM Records のなかでも指折りの佳品だと思うんですが。
〈メンバー〉
・ゲイリー・バートン Gary Burton(ヴィブラフォン)
・ミック・グッドリック Mick Goodrick(ギター)
・パット・メセニー Pat Metheny(ギター)
・スティーヴ・スワロウ Steve Swallow(ベース)
・ボブ・モーゼス Bob Moses(パーカッション)
・エバーハルト・ウェーバー Eberhard Weber(ベース)
〈曲目(作曲者)〉
1. Mevlevia (Mick Goodrick)
2. Unfinished Sympathy (Mike Gibbs)
3. Tunnel of Love (Mike Gibbs)
4. Intrude (Mike Gibbs)
5. Silent Spring (Carla Bley)
6. The Colours of Chloë (Eberhard Weber)
聴きたいものが思い当たらず、ECM のプレイリストをランダム再生していたときに、アルバム4曲目 Intrude がかかり、すぐボブ・モーゼスの繊細なプレイに釘付けになりました。 おそらく Interlude とかけたタイトルで、最初の二分半がドラムソロなんですが、まるでピアノで弾かれたメロディーを聴いているような感覚に陥ります。同じドラムを叩いていても、トーンが大きな流れのなかで毎音微妙に調整されていて、とても呼吸が深いんですよね。バートンは77年に Passengers というアルバムも出していますが、こちらはドラムがダン・ゴットリープ Dan Gottlieb で、全体に、よりタイトな雰囲気です。ピンク・フロイドのようなジャケット(Lajos Keresztes)も相まって、良い意味で不安をたたえた作品だと感じます。
その点、Ring は寝る前に聞いても落ち着くのが良いです。一曲ごとに全くアプローチが違って飽きませんし、それでいて薄墨のなかを漂うような心地は一貫しています。これは多分にベースのウェーバーとスワロウの力によると思うのですが、とりわけ3曲目のTunnel of Love と5曲目の Silent Spring では、彼らのプレイを十二分に堪能できます。ウェーバーは、五弦ウッドベースにサスティンをかけた独特のプレイで知られていますが、木管楽器のような響きが随所にあり、どこか日本的な枯れた美しさを感じます。
興味深いことに、1曲目 Mevlevia は、イスラーム神秘主義(スーフィズム)の教団であるメヴレヴィーをモチーフにしています。実際のメヴレヴィーが実践する、神との合一のための円環的な踊り(Ring というタイトルも、これにかかわるのでしょうか)に比べると、きわめて建築的な構成ですが、メジャーコードに切り替わるタイミングがかなり絶妙で、スーフィーにも劣らない陶酔感があります。
ウェーバーはいませんが、 この The Colours of Chloë (5:45-)には度肝を抜かれます。アルバムで聞くのとは印象がかなり違う、鬼気迫る演奏です。スティーヴ・スワロウに至っては、ほとんど逝っているんじゃないでしょうか。モーゼズのドラムも半端ない。直後に彼のソロが続きますが、スティックの上下を切り替えたり、肘でミュートをしたり、こういう細かい技をたくさん使ってあの音が作られていたんだ、ということがよくわかる、貴重な映像でした。

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