ikeda

その他 altro

ネタバレ・コンプライアンス考(補足)

 前回書いた内容について、おそらく自分に向けられたであろう(そうでなくても)鋭い批判を目にしたので、それをふまえて考えたことをまたいくつかメモしておこうと思う。ネタバレという主題からはやや逸れてしまうが。  とりわけ映像や書籍の場合、ネタバレがこれほど忌避されるのは、作品およびそれにまつわるプラットフォームの性質上、作品を生の芸能として体感させる言葉が流通しづらく、結果として鑑賞者が情報消費的な態度に落ち着いてしまうからではないか、というのが前回の主旨だった。これは議論構成として古臭いうえに脆く、もっと厳密に考えるべきであった。批判されるべき理由はほかにもあるだろうが、思いつくところでは、たとえ作品を情報の集積と見た場合でも、だからといって作品が体感を生まないとか消費されてしまうといったことにはならない、という意見が挙げられる。事前に漏れた情報を知っていると、作品の体感そのものが毀損されるのだという異論はありえる。こうした点について書かなかったのは、字数によるところもあるが、それ以上に、体感という言葉を、自分なりの前提にしたがって用いていたからだろうと思われる。  私は...
詩 poesia

Rita Lee, Amor e Sexo(ヒタ・リー「愛とセックス」)

ブラジルロック歌手のレジェンド、ヒタ・リーの名曲を、いちおう歌えるように訳してみました。こんな歌を作れる言葉があるということに、聞くたび感銘を受けます。ぜひ、曲を流しながらテクストを読んでみてください。 Amor é um livroSexo é esporteSexo é escolhaAmor é sorteAmor é pensamentoTeoremaAmor é novelaSexo é cinemaSexo é imaginaçãoFantasiaAmor é prosaSexo é poesiaO amor nos tornaPatéticosSexo é uma selvaDe epiléticos愛は本でセックスはスポーツセックスは選ぶ愛は定め愛は考える法則愛はドラマセックスは映画セックスはイマジネーションファンタジー愛は文章セックスは詩さああ愛していると辛くてセックスは森だ引き攣る者の Amor é cristãoSexo é pagãoAmor é latifúndioSexo é invasãoAmor é divin...
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ネタバレ・コンプライアンス考

 私は作品のネタバレに関して、基本的にそんなことを気にする必要は一ミリもない、という(おそらくは過激な)立場をとっている。  これはネタバレを気にする当人を批判するつもりで言っているのではない。ネタバレを気にするかどうかが大問題だ、と考えているわけでもない。私は単に、これほど「ネタバレ・コンプライアンス」が働いてしまう認知的背景自体に興味があり、その背景に関しては、いくつか批判すべき点が見つかると思っているだけだ。この問題を取り上げながら、もっと多くの人と、気軽に作品についての話ができる環境を探してみたいのである(なお、以下では一般に「鑑賞」の対象となる作品についてのみ語る。たとえばゲーム作品は「プレイ」するものであり、「鑑賞」の次元がはじめから存在しないため、この限りではない)。  ちゃんと調べたわけではないが、「ネタバレ・コンプライアンス」がこんなに浸透している国は、日本くらいじゃないだろうか。海外の動画を見ていると、話し手が「ネタバレ(spoiler)したくない」と言う場面は見かけても、「ネタバレやめて!」と他人に言う場面にはほとんど遭遇しない。日本の場合、予防が...
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Marielle Macé, Parole et Pollution (マリエル・マセ「言葉と汚染」)——「絆の政治学」にむけて

 たしか学部3年の頃、コロナ禍が明けるかどうかという時期(「汚染」がテーマとなっている理由)にフランス語の授業で読んだエッセイです。先日パソコンを整理していたときに見つけて、あらためて読み直しました。2021年1 月28日の記事ですが、昨今の政治状況と考え合わせても重要な提起がなされているように思ったので、下に紹介します(元記事はフランスメディア AOC [Analyse Opinion Critique 分析・社説・批評])。  筆者は、言葉こそ現代社会において最も汚染された領域なのではないか、という仮説から出発し、言葉を世界への(あるいは世界からの)再関与の形式と捉えます。その関与のなかに、人間の責任とケアの可能性を見出します。こうした問題意識から、後半部では、詩の重要性が確認されていく、というのが趣旨になります。こう下手にまとめると優等生の小論のようにも見えかねませんが、さきを読んでいただければ、その主張の強かさは、確かめてもらえるのではないかと思います。  さて、まず彼女は言葉の「汚染」の証拠として、いくつかの実例を持ち出します。どれも、昨今の行政やSNS上にお...
音楽 musica

Gary Burton Quintet with Eberhard Weber, Ring, 1974.

 最近よく聞いている、春の夜にとてもよく合うアルバムです。パット・メセニーの最初期の録音としても知られていますが、取り上げられることはそれほど多くないんじゃないでしょうか。個人的には、ECM Records のなかでも指折りの佳品だと思うんですが。 〈メンバー〉 ・ゲイリー・バートン Gary Burton(ヴィブラフォン) ・ミック・グッドリック Mick Goodrick(ギター) ・パット・メセニー Pat Metheny(ギター) ・スティーヴ・スワロウ Steve Swallow(ベース) ・ボブ・モーゼス Bob Moses(パーカッション) ・エバーハルト・ウェーバー Eberhard Weber(ベース) 〈曲目(作曲者)〉 1. Mevlevia (Mick Goodrick)  2. Unfinished Sympathy (Mike Gibbs) 3. Tunnel of Love (Mike Gibbs) 4. Intrude (Mike Gibbs) 5. Silent Spring (Carla Bley) 6. Th...
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