ikeda

詩 poesia

休日の電車

あの電車に乗ったらぼくはもうぐっすり眠るだろういっぱい本を詰めた鞄を足もとに置いて 腕をひろげてこときれたように気持ちがいいんだ抜け目ない子供が財布をすってもぼくはいっこう気づかず眠るあたりのみんなも眠りはじめるおじさんのよだれが座席に落ちジャージを履いた女子高生も子守りに疲れたおばさんもぽっかり口を空けたまま——一羽のルリカケスがまっすぐに車内を飛んできたそれには気づかずにいつしかみんな起きるのを待っている神様はびんぼうゆすりを繰り返しそのゆすりがまた眠気をさそうのだどうしてこんなにやわらかいのだろう車窓を素早くよぎる動かぬはらわたはいっそうやわらかい、ということを忘れるほどただ家に帰るだけなのに海水浴をめざすような気分だ、なんて——ああ これは家への道ではない  この乗客はみな 家を失った人々——気づいたとき僕はもう列車に乗っておりそれからずいぶん長いこと揺られていたこともかさねて思い出していた最初に起きたおばさんがいそいそ荷物をまとめはじめる転がり落ちたミカンをすかさずひろい僕は——あのう、降りるんですかと聞くおばさんは寝ている子どもを一瞥し——この子を届けにいくんですよと言...
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